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「い、ら、な、い! ねえ、もしかしてあんたの中で私は『いい想い出』ってやつなの? それは勝手だけど、私まで一緒にしないでよね」  テーブルを挟んだ向こう側、彼女が口の端を吊り上げて皮肉っぽく笑いながら口にした。  そうだよ、いい想い出だった。今、この瞬間まで。  最近は思い出すこともなかったとはいえ、ずっと心の片隅に引っかかっていたピアス。  ……真亜沙のことも。  忘れものなんて俺が言い訳に使っただけで、お前にとっては「奪われたもの」だった  そうだと信じていた。  だってあんなに大切にしてくれていたじゃないか。  だから、「なくした」って気に病んでいたりしたら申し訳ない、って俺はずっと心配していたんだよ。  全部俺の一方的な思い込みだか願望でしかなかったってわけか?  ──忘れもの、ではなくても、真亜沙の中では完全に「もの」だったんだな。ピアスも、きっと俺も。                               ~END~
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