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幼稚だ、いい年して、と嘲笑されてもまったく気にならない。
現実の男に振り回されて恋の鞘当てで疲労困憊し、時には恋敵の足を引っ張ることだけ考える。
そんな醜悪な感情の渦の只中に身を置きたくはなかった。
今までにも、現実の男性にそういった感情を向けられたことはある。
告白された経験も、多くはないが確かにあった。
実は、社会人になっていつまでもこのままではいけないのでは、と危機感を覚えて一度だけ承諾したのだ。
しかし、その交際は長くは続かなかった。
葉音のことなど考えてもくれない、一方的に尽くしてもらうことのみ求めるような男に、「やはり自分にはこういったことは向いていない」と別れを告げてしまった。
それについては、今も後悔はしていない。
自分から僅かでも関心を持ったのは尚登が初めてだ。
夜空の月を見て、綺麗だというただの感想には、大抵の男性は適当に合わせるのではないか。
あるいは、同感だと乗って来る相手もいるかもしれない。
知識に感心するとともに、意外過ぎる反応にかえって好奇心が湧いたのも事実だ。
いったいどういう男なのだろう、と。
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