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◇ ◇ ◇
交際を初めて一年が経った頃だった。
「葉音ちゃん。僕とずっと人生を共にしませんか?」
二人でよく訪れていたレストランでデザートを前に彼が唐突に切り出すのに、葉音は一瞬反応できなかった。
「……えー、と。それは『結婚』て意味に取っていいの?」
「そう。あー、いつも直球ばっかりじゃ女の人はつまらないかな、と思って考えたんだけど。僕のすることって本当に上手く行かないね……」
ただ「結婚しよう」では捻りがなくて響かないかと迷ったのか。
葉音にしても、彼の台詞が「求婚」なのは当然わかっていた。しかし、この恋人は一般常識では測れない部分があるので、無粋は承知で確認したのだ。
「そういう人だから私はあなたといるの。──これからもずっと一緒にいたい」
隣にいても、気負わず楽に呼吸ができる稀有な存在と。
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