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 翌春に尚登と結婚することになった、と報告した際に、全身で喜びを表しながら祝いの言葉を贈ってくれた奈津美。  そして彼女は、少しの逡巡ののちに思い切ったように口を開いた。 「あのさ、もう時効だと思うから言っちゃうけど。例の合コン、神崎さんのためだったのよ。『すごくいい奴だけど出会いがない。普通の女の子じゃ多分無理だけど、もし合う子がいるなら』って、大学の友達に持ち掛けられてさ」  男性側の幹事が、奈津美の大学時代の同級生だったのだという。 「だから、……えーと言葉悪いんだけど、あんまりガツガツしてない穏やかでしっかりした子を集めてくれって頼まれたの」  あたしが真っ先に浮かんだのが山際さんだったんだよね、と彼女が続ける。 「『どうしても彼女作ってやりたい、結婚させたい』じゃなくて、気の合う女の子と会えるだけでも貴重だから、って。そもそも男職場で本当に機会がないんだってさ。上手く行かなくても別にいいし、実際神崎さん全然その気じゃなかったでしょ?」  その通りだ。  尚登は結局、最初に割り当てられた中央の席からはすぐに逃れて、同じく端へ端へと移動した葉音と向かい合って食事をしていただけだった。  もしかしなくとも、葉音以外の女性とは口もきいていないのではないか。
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