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【3】
忘年会の会場は勤務先でよく使う店舗で、最寄りは大きなターミナル駅になり、複数の路線が乗り入れていた。
帰り道、葉音と路線も方向もまったく同じメンバーはいなかったが、駅そのものは参加者の大半が利用するため同じ道を行くことになる。
一次会のみで時間も比較的早かったこともあり一人で帰るつもりでいた葉音も、結局は同僚や上司の群れの中にいた。
しかし、少人数のグループに分かれて会話が交わされている中、連れのいなかった葉音の隣に誰かが立つのがわかった。
同じ職場の男性社員である雨宮だ。
確か三十代半ばだったろうか。尚登や奈津美よりいくつか歳上だった筈。
普段はほぼ仕事での絡みもないため、挨拶程度はともかく会話を交わした記憶もすぐには探せない。
彼が話し掛けて来るのに作り笑顔で相槌を打ちながら、正直なところ開放して欲しいと考えていた。
せめて奈津美やそれなりに親しくしている女性の先輩なら、と思ったものの、彼女たちは同期や上司と話が弾んでいる様子だ。
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