『羽のない黒天使』

7/8

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「ただ、たぶんずっとは無理じゃないかな。ここ、あくまでも『小型犬か猫か小鳥』OKだから」  確かにそれはそうかもしれない。  犬は、猫とは違いどれだけ大きくなるかわからない。  最初から「小型」が約束されている犬種ならともかく、おそらくは雑種(ミックス)だろうこの仔犬では。  そういう懸念もあったのか。 「まあ、就職した時に決めて、引っ越すのも面倒だから住んでただけだし、次の更新で新居探すわ。あと半年だから何とかなるでしょ」  おそらく菜穂は、初めからそこまで見通していた筈だ。それを承知で受け入れてくれた。 「あのペットコーナーの店員さん、とりあえず最低要るものって言ってたけど、飼うならもっと色々要るよな? 買いに行こうか」  思いついて口を開いた晋也に、菜穂が頷いて答える。 「そうだね。あと獣医さんに健康診断とかもしてもらった方がいいと思う。ワクチンもあるし。それは平日じゃないと無理かな。この辺にあるか調べないとね」  ……獣医なんて頭にもなかった。菜穂の方がよほど現実的なことを見据えているのだ、と晋也は返す言葉もない。  そういうわけで、黒い仔犬は菜穂の飼い犬になった。  あくまでも晋也の気分的には二人の、だったけれど。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加