『OMG! ~Oh My God!~』

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 実際、最初に揉めた時点で今野が「これ以上、いくら粘られても何もできませんよ!」と強い口調で言い放ったのは、後方に居た亜沙美にも届いていた。  つまりは「脅しには屈しない」と明言したも同然だ。  彼女は今野相手ではどうにもならない、とすぐにその場を離れ本社に問い合わせたらしい。 「本当に、返す言葉もございません。ところでご用件はお済みでしょうか?」 「まだよ。『仕方ないけど受けてあげるわ』なんて上から言って、『お願いいたします』って立場じゃないと思ってるんですけど、私。……ああ、その方はそう考えてるのかしら?」  あからさまな嫌味にも、こちら側としては何ら反論できる筈もない。 「では早速処理させていただきますので! ──井上さん、いいか?」 「はい! こちらへどうぞ。本当に申し訳ありません」  井上が詫びながら促すのに、客の女性は改めて用件を切り出しながらも(かぶり)を振った。 「あなた方にはこれ以上謝っていただく必要ないわ。十分お気持ちは伝わりましたから」  口にはしなかったが、今野に謝らせろというのが本音だろうことは亜沙美にも想像がつく。  それでも、表面上だけでも引いてくれた彼女は『大人』なのだろう。 「もう本当に結構です。ただ、こういうケースは今の時期他にもあると思うので、二度と同じミスがないようにだけお願いしたいの」  すべて終了した後、上坂や井上が並んで再度謝罪を述べるのに、彼女は薄く笑みさえ浮かべてさらりと告げる。 「仰る通りです。すぐにでも周知徹底を図らせていただきますので」  鷹揚に頷いて、客はそのまま帰って行った。
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