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同じ課の、三歳年上の先輩社員だった蓮。
一年半前に美沙の係に異動してきた彼とは、業務の関係で何かと関わる事が多かった。
しかし、ただの先輩と後輩社員だったのだ。あの日までは。
半年ほど前に、突然美沙は蓮に告白された。
正直、彼に特別な想いがあったわけではない。逆に悪感情もまたなかったのではあるが。
二十六歳になる現在まで、美沙は男性と恋人として付き合った経験は殆どない。
蓮も口にしていた通り「外見は良い」らしい美沙は、それなりに男性に人気があった。
しかし、所詮「トロフィー」として求められているのがあからさまに伝わる男に好意など持てなかったからだ。
その点、蓮からは仕事で接する中でそういう素振りは一切窺えなかった。だからこそ、この人は美沙の内面を見てくれていたと嬉しかった。
……先程の言葉からすると、それも美沙の勘違いか思い込みだったのかもしれない。
震える指先でPCのキーを打つのはなかなか骨が折れる。少なくとも普段通りのブラインドタッチは不可能だ。
それでもどうにか入力を続けながら、美沙は蓮と綾を視界の端に捉えていた。
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