『OMG! ~Oh My God!~』

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 彼女には日常の仕事は別として、指導を任せられるだけの技量はないと見做されているということだろうか。  今野以外はそれこそ新人に毛の生えたようなアルバイトしかいないのだから。  実際に他の部署では実務をよく知るパートタイマーが指導に当たるのは普通らしい。  アルバイトの募集があると教えてくれた大学の先輩の話だ。  彼女はもう一年は勤めていて、最初は窓口配属だったがすぐに今の部署に移ったという。  どうやら『誰にでもできる』窓口担当の仕事ぶりで協調性含めた能力を見定めてから、適性による業務へというシステムのようだ。  おそらく亜沙美も、少し慣れて次の新人が入ったら順に部署替えになるだろうとは社内の慣習を知る彼女の言だった。  ちなみに、あくまでも『窓口』は客を最初に(さば)くだけの役割になる。それぞれの客の用件を、内勤の専門部署に繋ぐ入口なのだ。  当然経験はないが、会社の受付嬢のようなものかもしれない。それとも、彼女たちの職務は見た目のイメージとは違うのだろうか。  それさえも、働くこと(アルバイト)自体初めての亜沙美には判断できなかった。  次の勤務日にも、相変わらず今野は窓口に居た。  特段の何かが起こらなければ、決して仕事ができない人ではないのだ。それは、短い期間でも共に過ごした亜沙美も知っている。  それでも、正直同僚として一緒に働きたいと感じる人物ではなかった。  もちろん言動に出すつもりもないけれど、今日は取り分け当たりがきついのは亜沙美の気のせいではないと思う。  実際、井上が何度か苦言を呈していた。  庇ってくれるのは助かるが、彼も本務があるので窓口張り付きではない。  何よりも指導期間がもうすぐ終わるのだ。自分でなんとかしなければ。  形だけの笑顔で受け流しながらも、何かが削られて行くのが辛かった。
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