【3】

1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

 【3】

「宮城さん、これわかりますか? 心拍確認できますよ。……まずは第一段階クリアですね」 「はい。……でも」  一週間後の診察は隆志も同行した。しかし前回も、ここまではできていたのだ。  冬美の口には出さない不安を読み取って、担当医が続ける。 「前にも説明しましたが、ごく初期の流産は胎児原因がほとんどです。お母さんが気にして、──気に病んでいいことは何もありません。今はとにかく、心配しすぎないようにしましょう。そうはいっても無理は禁物なので、お父さんがそこは気をつけてあげてください」 「はい! あの、家事も全部僕がやったほうがいいですか? あ、あと妻の仕事は──」  前のめりに早口で捲し立てる夫に、医師は微笑み口を開いた。 「落ち着いて、お父さん。家事もお仕事もなさって大丈夫です。もちろん、お父さんがいろいろ分担するのは大事ですよ。特に力仕事は。お二人のお子さんがお母さんのお腹にいる、というのを忘れないでください」  優しい笑顔でそれでも釘を差して来る担当医に、隆志が安堵の溜息を吐いた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!