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天窓から差す朝日の眩しさに僕は目を開ける。
隣ではアサギがまだ眠っている。
「アサギ、朝だよ。起きて」
僕がいうと、アサギは寝返りを打ってベッドから落ちた。
「いったー。最悪な目覚めだ」
流石に目を覚ましたのか、アサギは目を擦りながら立ち上がった。
僕は「おはよ」と一言声をかけるとキッチンへ向かう。
「アサギ、何が食べたい?」
「んー。フレンチトースト食べたい。蜂蜜がたくさんかかった甘いやつ」
甘党のアサギはありえないくらい甘いものを好んで食べる。
反対に、僕は苦党なため朝はコーヒー一杯と決めているのだ。
すぐに食材を用意してフレンチトーストを作る。
「お~! 甘い匂いがする」
蜂蜜の香りにつられて、アサギがキッチンへと入ってくる。
「はい、フレンチトースト」
「うわぁ~! 美味しそう! 俺、ヴィトの作るご飯大好き!」
完成したものをダイニングテーブルの上に置くと、アサギは子供のように目を輝かせて声をあげる。
「食べたら仕事だよ。遅れないようにちゃんと準備してね」
僕はコーヒーを口に含みながらアサギを見る。
「はんひはは?(何時から?)」
「アサギ、喋るときは口を空っぽにしてから」
「ん………………ごめん」
「いや。今日は9:00から。最低でも30分後には出るよ」
「はーい」
アサギはフレンチトーストを美味しそうに頬張りながら答えた。
僕はコーヒーを飲み終えると、カップを洗い、一旦部屋へと戻る。
麻でできた至極シンプルな服に、腰に太いベルトで剣を提げる。
左腕に電子デバイスをいれるためのケースを結びつけるとダイニングに戻る。
ちょうど食べ終わったようで、キッチンでお皿を洗っているアサギがいた。
「アサギ、後は僕がやっておくから着替えて準備をしてきなよ」
「大丈夫、もう終わったよ」
アサギはタオルで手を拭くとダイニングへ出てきた。
「ちょっと待ってて」と言いダイニングを出ていったアサギは、少ししてから僕と同じような服装で戻ってきた。
「行こ!」
アサギはまるで子供のようにはしゃぎながら玄関を飛び出す。
僕はアサギを見失わないように、だけど落ち着いて歩みを進める。
§
「マスター! 今日の仕事は?」
僕たちの仕事は、所謂狩りだ。
悪さをする人間の執行や魔物の退治を主とする。
「あぁ、アサギとヴィトか。早かったね」
マスターはゆっくりと顔をあげ、穏やかに微笑んだ。
「今日は西区域の魔物掃討だよ。数が多く、少してがかかるかもしれないが頼めるか? 援護をつけることも可能だが」
「いや、大丈夫。俺達だけでできるから」
アサギはマスターの提案を自信満々に断り、僕を連れて店から出た。
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