STEP6

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ちなみにわたしは入学以来、一度も利用したことがない。勝手な偏見だけど、陽キャの人たちの巣窟という感じで入っていけなかったからだ。蓉子ちゃんは本当はあっち側の人だろうに、屋上入り口手前の暗い階段や(天気のいい日は)グラウンド前の花壇に腰掛けて食べるわたしにつき合ってくれてる。 そんなわたしはとてもじゃないけど初学食を楽しむどころか、いつもなら大好きなはずの豚の生姜焼きオンリーのお弁当も喉を通る気がしなかった。 「明里の友だちって、二ノ宮さんだったんだ?」 わたしの向かいに座った田中くんは、行きがけに買ってきたのかコンビニの袋からパンと野菜ジュースを取り出すと、斜め前(つまり私の隣)の蓉子ちゃんを見た。そこには緊張の欠片もない。 蓉子ちゃんを前にすると、たいていの男子が顔を赤らめて一度は臆したりするものなんだけど、そこはさすが、自分も顔面偏差値最強人間なだけに、余裕なのかもしれない。 そういえば入学当初、田中くん相手に勝手な噂を立てられたと蓉子ちゃんが言ってたっけ。 「へえー、名前知っててもらえて、光栄だわぁ〜」
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