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田中くんはなぜかわたしをじっと見てきた。
実際背が高いんだけど、なんだか今はひときわ見下ろされてる感じがする。というか、わたしが小さくなってしまいたいというのか……。
「貸してやろうか?」
「へ?」
思わず顔を上げると、真面目な表情の田中くんと目が合う。
そうだ。そういえば昨日と違って、さっきから田中くんの態度に茶化すようなものは感じなかった。
「二万円、貸してやるよ」
もう一度言われて、ようやく頭が追いつく。
貸す? ど、どういうこと?
「えっ? どうして。意味がわからない……」
「ほかに当てがあるならいいけど。俺はどっちでもいいし。ただ、条件はある」
“条件”と言ったとき、田中くんが初めて面白そうに口の端を上げた。
その微笑み、やっぱりただの親切じゃないんだ……。
「その気なら、三時半きっかりにそこの裏に来い。部活とかやってないんだろ? 桜庭先生がとっとと帰るって言ってたし。俺も放課後は暇じゃないから十分も待たないからな。時間厳守で。じゃあ」
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