STEP4

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「とりあえず、ここじゃ落ち着いて話せないから多井町(おおいまち)駅へ出るか。あんたんち、あの駅の近くなんだろ?」 直前まで迷ってたけど結局三時半五分前には裏庭にいたわたしに、時間きっかりに現れた田中くんはそう言って先に歩きはじめた。 央崎高は少し高台の場所にあって、駅までは緩い坂道を下っていく。 「えっ? なんで知ってるの?」 「スーパーで会っただろ。わざわざ電車に乗って来るようなスーパーでもなかったし。普通に近所に住んでんだろうなって」 なんかヤマユーストアをさりげなくディスられてる気がしたけど、わたしは歩幅が大きい田中くんの歩きについていくので精一杯だった。 「そ、そうだ、田中くんも昨日はバイト先の近くだったの? あのパティシエさんのお店?たしか北口にあるって言ってたような」 ほとんど小走りで追いつきながら声をかけると、田中くんが急に立ち止まって振り返った。 「それ! 友だちとかには言うなよ?」突かれそうな勢いでこちらを指さしてきたので、びっくりする。 「い、言ってないけど?」蓉子ちゃんに話したのは校舎裏での出来事だけだ。たまたまだけど。
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