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「ど、どうすればいいの?」
「そんな難しいことはない。学校にいる間だけ、つきあってる設定でいてくれれば。念のため連絡先は交換した方がいいけど、プライベートは何もしなくていい。な? 楽だろ?」
うん。たしかに楽……そうに聞こえるけど
「まだ、何か?」
少し苛立ちはじめてる感じの田中くんのはるか後ろにある壁時計がふと目に入ってハッとする。
もう少ししたら煇が家に帰ってくる。
「わ、わかった。引き受けるから」早く帰りたい。
「よかった。ま、探り探りでやってこう」
“よろしく”という意味なのか、あらためて右手を差し出されたので握手に応じた。今度はあっさり離れたけど。
もしかして、もしかしなくても、これって最初から引き受けさせるつもりだった?
「はい、どうぞ」田中くんが指先で封筒をこっちに突き出してきた。
「……いいの? 借用書とか作らなくて」両手で封筒を受け取りつつ、問い返す。
「ああ、意外。そういうのキッチリするタイプなんだ?」切長の目が少し見開かれる。
「わ、わたし、借りっぱなしにするつもりないし。その、すぐには返せないかもしれないけど……」
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