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「お察しの通り?うちはお金に困ってるの。もちろん両親は真面目にちゃんと働いてるよ。でもお父さんはリストラされて再就職も微妙だったし、おまけにお金ないのに貸しては相手が消えちゃったり捕まっちゃったりだし。そんなんじゃ、将来が不安になってもしょうがないでしょ。わたしはいいけど、弟はちゃんと大学進学させてあげたいし、だから」
「わ、わかった。もういい」
引き気味に遮られて、急に恥ずかしくなった。
田中くんは真顔でこちらを見ている。どう……思ったんだろう。
「本当はね、そんな上手くいかないのだって、わかってた。かと言って、わたしが何とかできるとは思え……」
「いや、わかった。悪かったな、馬鹿にして」
少し伏目がちに、本当に申し訳なさそうに言われて驚いた。
短時間で何がわかったってわけじゃないけど、率直な物言いも、単に傲慢なんじゃなくて、自分が悪いと思ったら素直に謝れる人なんだって。
「もういいよ。長く引き留めてごめん。じゃ、また、来週」
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