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「はぁ、いや、なんか複雑だけど……じゃあね、さよなら」
最後は同情の視線になっていたであろう山崎くんの顔をまともに見られなくて、うつむいたまま、うなづいた。
彼の靴が遠ざかっていくのを視界の隅にとらえながら、もう学校外から探すしかないのかな、どうやって探せばと考えていると
「ぶはっ」
背後で誰かが吹き出したような声が聞こえた。
思わず振り返ってよく見ると、校舎を曲がった先に男子の背中が見えた。
えっ? 今までのこと、聞かれてたの⁈
「くくくっ……なにそれ、玉の輿って……やばっ、あははは」
本当におかしくてたまらないみたいで、身体をくの字に曲げてお腹を抱えてる。
何よ、こっちの気持ちも知らないで!
わたしはこれでも真剣に相手を探してるのに!
この見知らぬ背中にだんだん理不尽な怒りが湧き上がってきた。
「なにが、おかしいの?」
自然と低くなった声とともにその背中をにらみつけると、相手が振り返った。
艶のある漆黒の髪。
長めの前髪の下にある目は、ややツリ目だけど切れ長の二重。
瞳は青みがかった黒目。
すっと伸びた鼻梁。
笑いを堪えていても綺麗なフォルムの唇。
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