14人が本棚に入れています
本棚に追加
STEP6
田中くんからキツい一発を見舞われた市川さんは、顔色を失い、唇を噛み締めていたが、何も言わなかった。それは彼の言ったことが当たってたということでもあるのだろう。
そして田中くんがじつは根に持つタイプだということもわかった。わたしに偽彼女を頼んだのって、こうやって市川さんを打ちのめすことも目的の一つだったんじゃないかって……考えすぎ?
ところでこの凍りついた空気、どうするのぉ??
とアワアワしているわたしの肩を抱いたまま、田中くんは回れ右をさせるとわたしの教室に押しこめてくれたので、とにかく逃げるように離れた。後ろの席に蓉子ちゃんの顔を見て、ものすごくホッとする。
「じゃあ、昼、学食で。友だちも一緒でもいいよ」
念を押すように田中くんの言葉が飛んできて、振り返ると教室の入り口でニコニコ顔で手を振っていた。わたしはというと「あ、はい」と下の方で小さく手を振り返すことしか出来なかった。
「だから言ったでしょ。そんな簡単なもんじゃないだろうって」
泣きそうな顔で蓉子ちゃんの元へ向かったわたしに、彼女は呆れたようにそう答えた。
最初のコメントを投稿しよう!