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対する蓉子ちゃんはそう返事したけど、顔は全然嬉しそうじゃない。むしろ、かなり不機嫌な方。でもそれはずっと一緒にいるわたしだからわかる微妙なもので、表面上は愛想笑いという感じだ。
田中くんと学食でご飯なんて、とても耐えられそうになかったわたしが泣きそうな顔で頼みこむ前に、蓉子ちゃんは何も言わず学食についてきてくれたわけだけど、こんなに嫌そうにするとは思わなかったな。
つい先日話した時には田中くんの言うことに賛同したり、(冗談だったにしろ)お薦めしてきたりしたのに……。
「そりゃ〜、そうでしょ。計と噂になってたじゃん? たしか五月頃?」
そう言って二人の会話にぐいっと入りこんできたのは、たしか志村くん。いつも田中くんと一緒のお昼なのか、当然のようについてきて、彼の左隣に座っていた。
「あ、俺、志村晴哉。以後、お見知りおきを」
先日と同じく軽い調子で微笑む。しかし、彼が目で「よろしく」してるのはたぶん蓉子ちゃんに対してだ。
そんな志村くんもあらためて見るとイケメンの部類である。田中くんほど際立った美形ではないけど、大きな二重の瞳とか、色白で薄くソバカスがあったりするのも、なんというか愛嬌がある感じ。軽くパーマがかかってるのか、明るい茶色の髪はところどころはねてたけど、それもなんだか犬っぽくて、さらに愛嬌を増してる気がする。
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