STEP6

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田中くんの長く細い指が、焼きそばパンを目の前に突き出してきた。 「弁当半分食っちゃったからさ。これ、やる」 「えっ? いいの? 足らなくならない?」 たしかチーズパンとこの焼きそばパンと野菜ジュースしか持ってきてなかったような。チーズパンは大きめだったけど、あれだけじゃ足りなくなるよね? 男の子だし。 「いいんだよ。今日、バイトだから賄い出るし」 「そうなんだ。例のケーキ屋さんでしょ?」 と言ってから田中くんに素早くにらまれて思い出す。そうだった、内緒なんだっけ? それにしても、なんで内緒にしてるんだろう。そういえばバイト先までつけられたことあるとか言ってたような。そういうのが嫌だから? バイトのこと、志村くんにも言ってないのかな。 ……なんだかんだ、田中くんのこと全然知らないよね、わたし。 嵐のような昼休みがなんとか過ぎ去ったあと。 教室に戻ってきたわたしは、クラスの女子から質問攻めにあった。
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