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田中くんの長く細い指が、焼きそばパンを目の前に突き出してきた。
「弁当半分食っちゃったからさ。これ、やる」
「えっ? いいの? 足らなくならない?」
たしかチーズパンとこの焼きそばパンと野菜ジュースしか持ってきてなかったような。チーズパンは大きめだったけど、あれだけじゃ足りなくなるよね? 男の子だし。
「いいんだよ。今日、バイトだから賄い出るし」
「そうなんだ。例のケーキ屋さんでしょ?」
と言ってから田中くんに素早くにらまれて思い出す。そうだった、内緒なんだっけ?
それにしても、なんで内緒にしてるんだろう。そういえばバイト先までつけられたことあるとか言ってたような。そういうのが嫌だから? バイトのこと、志村くんにも言ってないのかな。
……なんだかんだ、田中くんのこと全然知らないよね、わたし。
嵐のような昼休みがなんとか過ぎ去ったあと。
教室に戻ってきたわたしは、クラスの女子から質問攻めにあった。
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