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『手伝ってくれてありがとう。助かった』
職員室まで運び終え、教室に戻りながら茅原くんにお礼を言う。
「いえいえ。なにか用事があった訳でもないし、大丈夫」
『なら良かった。…あ、僕あとは鞄取りに行くだけだし、先帰って大丈夫だよ?』
「ん?いや、せっかくだから一緒に帰ろうかなって。寮すぐ近くにあるけど」
まさかの言葉に驚いてしまう。大袈裟かもしれないけど、後輩以外と一緒に帰るのは初めてだし。
『!ほんと!?凄く嬉しい!ありがとう』
嬉しくてつい声が浮ついてしまう。そんな僕を見て茅原くんはくすりと笑った。
教室で鞄を取り、今度は玄関へ向かう。
僕は歩きながら、一緒帰れて嬉しいという気持ちと同時に寮が近付くに連れて少しづつ焦りを感じてきた。
せっかくだから、友達になりたい。そんな考えが頭にあったからだ。
今までまともに作れた試しがないけど、茅原くんなら。
『ち、茅原くん!』
「ん?」
『え、えっと…あの』
何をどう言えばいいのか分からなくて、思わず足を止めてしまう。僕の隣を歩いていた茅原くんはそれに気付くと、数歩先に進んだ所で止まってくれた。
「上条くん?」
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