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「みんなさ、思ってるんだよ」
「なにを?」
突然さっきと打って変わって静かに話し出した彰人の様子に首を傾げ、問いかける。
「妖精さんは自分たちとは違うって」
続いた彰人のその言葉にあぁ、と納得した。
「今日も妖精さん綺麗!!話しかけたいなぁ…けど、僕らなんかじゃ釣り合わないよねぇ」
「あこっち見た!うっわぁ可愛い!やっぱ妖精さんってこう、雰囲気が違えよな!」
「わかる!俺らより格上の存在…みたいな?もう住む世界が違うよなー」
どうしてそんなに崇めるのだろう。ずっと疑問だった。
容姿や性格がどうであれ、彼は僕らとなんら変わらない人間じゃないか。
中庭にいる彼に再び意識を向ける。
やっぱり綺麗で、表情を窺えば綺麗な笑みを浮かべていた。普段なら幸せそうに見えるそれが、どうしてか僕には泣いてるように見えた。
一人って、辛くないのだろうか。
たまになら分かる。それくらいなら僕だって全然気にしない。でも、彼はいつだって一人だった。
「なんで、兄さんばっかりっ!」
怒りと憎しみと嫌悪と、多くの感情が滲み出た声が頭に響く。
あぁ、一人にしたくないな。
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