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不思議の街の迷い子
独りになってから眠ることが増えた。どうせ起きていても何もならない。瞬きを数回するだけで一日が終わってしまうことなど慣れてしまった、
だから十数時間の飛行機の旅など短かった。
僕は生まれてこの方行ったことのないヨーロッパ北部に向かっている。ラトビアというバルト三国の中央に位置する国を目指して空を飛んでいた。
ぽっかりと空いた隣の席を見て、本来ならばここに彼女は座っていたはずだろうと考えて、それから窓の外へ目を移した。
およそ137億年前、宇宙はビックバンから生まれた何もない場所に小さな種ができて、この広い世界を作った。
僕は思う。またこの世界のどこかに彼女のタネが生まれやしないかと。
どんなに大金をはたいても何億光年先へ進んでも、二度と会えない。だけど、生前彼女が行きたがっていた世界で一番美しい国へ行けば、ほんの少しだけまた彼女に近づける気がした。
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