不思議の街の迷い子

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入国審査を終えてから市内バスでリガ旧市街に向かう。初めての海外の旅だったが、緊張や不安は一切なかった。感情が麻痺しているのもあるが、知らない土地で知らない人ばかりがいるので気が楽なのが大きい。 街に着いてバスを降りてからはガイドブックに目を落として歩いた。どこを見るか事前に明確にしていなかった。弾丸ツアー、行き当たりばったりで構わないと思っていたから。 こうして主体的に行動するのは苦手な性格で、どちらかと言えば相手についていく方が向いている。はしゃいでずんずん歩いていく彼女を必死に追いかけることができたら良かったのだが。とりあえず、予約したホテルを目指した。 教会が多い国らしい。外装が立派なパステルカラーの建物が連なるのを見ると日本じゃないことを実感する。空気も違うようだ。 この国は第二次大戦中、ソ連に占領されてドイツの統治下に置かれた大変な過去があるそうだが、苦しみを乗り越えて現在は美しく生きているのだ。傷ついた分だけ強くなれるというのは間違っていないらしい。最も、修復作業の流れがわからなければ、僕のようにいつまでも傷口が開いたままなんだろうが。 母国を離れても感傷的になるのは変わらないなと自虐的に笑う。そうこうしているうちにホテルに着いて、少しベッドに横になり道中の疲れを取った。
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