魚ガン池

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「大丈夫?」 「うん……」  生徒が走っていった方を見ると、男子生徒が少し離れた場所で立っている。同じクラスの宮田だ。彼はフミカと目があうと、なにも言わずに走り去っていった。 (失礼な奴。私を誰だと思ってるんだ)  彼の背中を指さすと、フミカはユキと分かれて家に帰った。 「まあいいや、私にはあの池があるしね」  池を見つけたのは、一週間前のことだった。フミカは近所の釣堀に行ったが、なかなか釣れず、帰り支度をしていた。その時、隣で釣りをしていた客のうわさ話が聞こえてきたのだ。 『昔は貯水池として利用されていた溜池に、誰かが逃がした魚が大量に繁殖しているらしい』  それを聞き、フミカは早々に釣堀を出た。彼らの話によると、フミカの家の裏手の山に、溜池があるという。  小学生の頃は山でよく遊んでいたが、溜池なんて見たことがない。ただのうわさ話だろう。そう思ったが、どうせ予定もなく暇だ。フミカは釣り堀を出て、裏山に向かった。  中学生になってからは、山で遊ぶこともない。獣道を歩くのも、久しぶりだ。始めのうちは楽しんでいたフミカだが、徐々に日が落ち始めると、不安になってきた。  帰れなくならないうちに戻ろうかーー、そう思っていた時だった。  急に目の前が開け、藪の向こうに陽光の反射する池が現れた。  確かに男性客が話していた通り、池には大量の魚が、あふれ出しそうなほど泳いでいる。  フミカは池を覗き込んだ。餌がもらえるとでも思ったのか、大量の青い魚がうねりを上げる。その魚の顔を見たフミカは、腰を抜かした。 「なに、これ」  魚の顔に、人間の顔が貼り付いていたのだ。尾ひれやうろこが生えた体を見る限りただの魚だが、顔には鱗がなく、代わりに人間の鼻や目、口、耳がついている。 「人面魚?」
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