第一話:いわゆるプロローグってやつ

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第一話:いわゆるプロローグってやつ

「この歳でこの格好はきついって~」 私はロッドを片手に泥人形のような化け物”ザコバッキー”と戦っている。 私の名前は伊藤魔鈴・・・いわゆる普通の高校二年生のはずだが、今は魔法少女ダイナマイト♡マリンに変身し、ヒラヒラの“いかにも魔法少女”な服装で戦っている最中なのであった。 「文句いうなや!この格好じゃなかったらおまえはザコバッキーにですらフルボッコにされてるんやで!」 傍らにはやたらと口が悪く、アヤシイ関西弁をしゃべる青い山羊がいる。 こいつの名前はヤギピー。本来いるはずのない動物が今、しゃべっている。 ちなみにこのザコバッキー、確実に私を狙ってきている。 かろうじてロッドをぶち当てて倒すことができているが、負けた場合はどうなるか正直想像したくない。 「もーきれた!!一気にケリつける!」 しびれを切らした私は、握っていたロッドにありったけの力を籠めた。 「ええど~マリン~、そのいきやで~」 口の悪い山羊が傍らで煽る、しかも棒読み・・・ 「うぉりゃああ!!倒れろや!くそがぁ!」 半ばやけくそでロッドをぶん回すと、ロッドの先端から光の刃が発生し、ザコバッキーを一気になぎ倒す。 「出たな必殺”ブルースター・スラッシュ”、これでザコバッキーも一網打尽や~」 ぱちぱちと力なく拍手するヤギピー 彼?のいう通り、あたり一帯を埋め尽くすほどいた泥人形は消滅していた。 「で・・・例の探し物は?」 私はヤギピーが”ある人”から使命を受けて探している”ある物”について聞いてみた。 するとヤギピーは珍しく申し訳なさそうな表情で・・・ 「あかん、こいつら一つも持ってない。」 とだけ答えた。 「ゲ、20体近く倒したのに今日も見つからなかったの?残り6個もあるんでしょ~」 私はその場にへたりこんだ。 「ま、世の中簡単にいかないって事や。先輩・・・」 山羊が器用に私を前足でポンポンと叩く。 「誰が先輩じゃ!」 「お~こわ、マリンがキれた。(笑)」 このようなヤギピーとのやり取りは何度目だろうか・・・ いい加減、何か進展してほしいと赤黒い空を仰いだ途端・・・ ジリリリ・・・ 不快なベルの音が世界に響きわたる 「ちっ、もう限界か!マリン!撤収や!」 「はーい!」 そういった私はロッドを腰のポーチにしまう。 このことによってダイナマイ♡マリンの変身は解け、いつもの伊藤魔鈴へと戻る。 そしてその瞬間強烈な眠気に襲われ視界がフェードアウトしていく・・・ ジリリリ・・・ その間も不快なベルの音は鳴り続けていた。 「はあ・・・寝ているはずなのに疲れた・・・」 私は額の脂汗をぬぐい、不快な音の原因である目覚まし時計のベルを止めた。 そう、ここは私、伊藤魔鈴の部屋、そしてベッドの上である。 ちなみに悪態をついていた青い山羊は、ぬいぐるみとして枕元にあったりする。 「そういえば時間は?!」 カチカチと音をたてて時を刻む目覚まし時計の針は7時5分を指していた。 「あ、もう5分もたっちゃったじゃないの!急いで着替えなきゃ!」 誰にいうでもなく文句をいいつつ、私は自分の通っている学校・・・星降学園高等学校の制服に着替える。 「お父さん、お母さんおはよう!」 台所のテーブルで食事をする両親に挨拶・・・ 「こら、ちゃんと時間通りに起きて食事しなさい!」 母さんにおこられつつテーブルにあったトーストをつかんでそのまま口にくわえながら学校へと急ぐ・・・ここ最近ずっとこの調子なのだ・・・ 毎晩寝たあと、私は”魔法少女ダイナマイト♡マリン”というこっ恥ずかしいキャラクターに変身してしまう夢を見ている。 しかも、おかしなことにこの夢は連続しているように思える。 そもそもこうなったのは”青い水晶のようなもの”をうっかり拾ってしまったせいなのだが・・・
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