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第三話:いわゆるチチロケットってやつ
「ゲ、今日の一限現国の授業じゃん・・・ってことは朝イチでぐんPと顔合わせるのか~」
「そりゃそうでしょ、現国の担当は郡司先生なんだから・・・」
ここは朝の学校、2年B組、私たちの教室である。
会話をしているのは私、魔鈴と親友の千晶ことチャンチー・・・
ちなみに私、伊藤魔鈴、朝から憂鬱である。
なぜかといえばぐんPこと郡司先生の担当する現代国語の授業だからである・・・
キーンコーンカーンコーン
そうこうしている間に予鈴がなり、大柄でぽっちゃりして眼鏡をかけた40代の男性が現れた。そう、彼こそがぐんPこと郡司先生である。
「はーい、じゃあ出席とりますよ~」
外見に似合わず声が高い。
私の好きな三人組のサーカス芸人のゲス担当ほどではないが・・・
「はい、出欠確認終わったところで教科書読みましょう。今日は52ページ宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と彼の生涯について・・・」
なぜぐんPが苦手かというと性格の問題ではない。
とにかく授業が眠くて眠気をこらえるのがツラいのである・・・
そして、いつも通りうとうとすると・・・
パーン!目の前で爆発音が!
「伊藤さん、居眠りはだめですよ~」
今の音はぐんPが私の目の前で猫だましをしたのだ。
さすがに寝て居るとはいえ生徒を叩いて起こすのは問題になるからというぐんPなりの配慮だろう。
「のびきったバネのようにだらけていると不意打ちされますよ~」
「はい、おっしゃるとおりで・・・」
教室は笑いの渦に巻き込まれる。恥ずかしい・・・
しかし、こういう点でぐんPは授業の進め方がうまいのかもしれない・・・
「まったく魔鈴は・・・ちゃんと寝てるの?」
授業が終わり、千晶が心配そうに聞いてきた。
「う・・・そういわれると変な夢ばっか見てるから熟睡できてない・・・」
「はあ、まったく・・・ちゃんと寝なよ~、ほれ、寝える前にこれ飲めや!」
溜息をついたチャンチーから手のひらサイズの乳酸菌飲料を渡された。
「あ!入手困難なラクルト10000!チャンチーバリ愛してる!!」
ちなみにこれは寝る前に飲むとリラックスして目覚めがよくなるという噂の飲物である。
「魔鈴、あなたに言われてもね~まあ・・・どういたしまして。」
そういわれて若干あきれ顔のチャンチーであった。
その夜
「さーて、チャンチーに貰ったラクルトも飲んだし、寝るか~」
寝る準備万端の私は、ベッドにもぐりこむ。
そして乳酸菌飲料のおかげか、即寝したのであった・・・
そして、いつも通りの赤黒い空の世界・・・
あいかわらず隣には青い山羊
「おう、来たな!マリン!」
「『来たな!』じゃないわよ、毎回毎回ちゃんと寝てるのに寝不足よ!そのうち肌とか荒れたり、目にクマができ始めてきて、『最近魔鈴ちゃんビミョーじゃね・・・』とか言われるんだわ!どうしてくれんのよ!」
「わけわからん八つ当たりスンなや!それよりさっそく奴さん来おったで!」
そういった青山羊の向いた方には泥人形バッキーが!
しかし、今回のバッキーはなんか様子が違っていた。
よりはっきりとした人型・・・しかもフォルムからすると女性のようだ・・・
胸の位置がやたらとデカいつくりになっていて、なぜか胸を手で押さえている。
「お、今回のバッキーはボインやな~誰かさんとちがって・・・」
「このエロヤギが!しまいにはドツくぞ!」
あまりの暴言にこぶしをわなわなと震わせる私・・・
それ無視するかのように青山羊は話し出す・・・
「ま、おふざけはこの辺にして・・・マリン!はよ変身し~や!」
「くそ~なんかむかつく・・・わかってるわよ!変身すりゃいいんでしょ!」
私はポーチからロッドを取り出し変身する。
「変身!魔法少女ダイナマイト♡マリン!からの即、攻撃!どりゃ~!
細かい段取り(?)を無視し、変身した直後に問答無用でバッキーの頭にロッドを叩きこむ!・・・つもりだったが・・・
「うわ、アホ!むやみに突っ込むんやない!」
いつになく警戒するヤギピー、何かを感じ取っていたらしい・・・でも無視して突撃する私。
「何言ってんの!相手の両手がふさがってるいでる今がチャンスよ!先手必勝!」
「突っ込んでくるなんて馬鹿バッキー!くらえ鉄球!」
バッキーが胸から手を離した瞬間、こぶし大の鉄の玉が二つすごい勢いで飛んできた!
「???うわああ!」
間一髪よけることができた・・・
「だからいわんこっちゃない!これはあかん・・・直撃したらいくら魔法少女の装備でもグチャグチャのスプラッタッタッタ~状態やで!」
「さらっと怖いことをギャグ調でいわないでよ・・・」
ヤギピーはイマイチ真面目なのかふざけているのかわからないところがある。
「ほら、痛めつけられなかったら”ブルースター”を渡すバッキー!」
ぼよよーん
気の抜けた効果音とともにすごい勢いで、また鉄球が二発飛んでくる。
この鉄球、結構な射程距離だ。
「ひ~ よけるのに必死で反撃できない~」
これは正直ピンチである・・・
「そんなんいうなや、さっきの勢いはどうした!反撃しいや!」
急にあおり始めるヤギピー
そんなこといっても無理なものは無理である。
今までの攻撃をかろうじてよけていたが、周囲の状況まで把握できておらず、気が付いたら私の背後には大きな岩が壁のようにそそり立っていた。
「馬鹿なヤツバッキー、背後には岩・・・もう逃げられないバッキー!」
そういって再び胸に手を添えるバッキー
そして手を放すとまた鉄球が飛んでくる。
「ギャー!」
間一髪でよけた鉄球は岩壁にシューシュー音を立てながらめり込んでいる。
相当な威力にぞっとするが・・・あれ?ひょっとして・・・
「マリン、よく見いや!こいつ攻撃力高そうやけど・・・」
どうやらヤギピーも気づいたらしい。
「うん。攻撃は単調・・・ばね仕掛けで鉄球を飛ばしているだけみたいね。でも勢いがありすぎて近づけない・・・」
その時、今日の授業中でのぐんPの言葉をふと思い出した。
「伸びきったバネのようにだらけていると不意打ちされますよ~」
伸びきったバネ!?
そうか・・・
私は狙いを定めるバッキーに対して、よけられるギリギリまで近づいた。
「こんな至近距離に来るなんて馬鹿バッキー!ブルースターのかけらは倒して回収してやるバッキー!くらえ!」
「この瞬間を待っていたのよ!」
鉄球を紙一重でよけ、バネが伸びきった瞬間を狙い、ロッドから出現した光の刃を振り下ろす!
「いっけえぇぇ!ブルースター・スラッシュ!!」
「しまったバッキー!」
あっけなくバネを切断することができた!
「武器がなくなれば、もうこっちのものね!」
「助けてくれバッキー!」
「だ~め!私をざんざん追い詰めたんだから許すわけないじゃない!
さようならのブルースター・スラッシュ!!」
私の二度目の攻撃で鉄球バッキーは真っ二つとなった。
「マリンも案外容赦ないんやな・・・まあ、バッキーには情けは禁物やけどな・・・」
青山羊は誰にいうでもなくぼそっとつぶやいた・・・
「ここまでバッキー!せっかく『欠片』を手に入れたのに・・・」
バッキーはいつも通りチリとなったが・・・
完全には消え去らなかった。
私の足元には三角形のどこかでみたような水晶が転がっていた・・・
しかも、形こそ違うが校庭の花壇で拾った水晶と同じく青色に輝いていた。
「これは?ひょっとして・・・」
「そう、『ブルースターの欠片』の一つ・・・ワイらが求めている『ある物』や!」
そうヤギピーが話している間に『欠片』はロッドに吸い込まれ、ロッドの中にあるくぼみにはまった・・・
それと同時に・・・
「なんか新しい力を得たみたい!」
今まで以上に力がみなぎっている。
「そんなんいうなら勿体つけずに試しに使ってみたらええやん。」
ヤギピーの言うことはもっともだ。
私は試しにロッドにはめ込まれた三角の水晶に手をかざした。
すると目の前に大きな光の盾が現れた。
「お、これはなになに・・・『ブルースター・シールド』って技みたいやな・・・」
どこからともなく手帳を取り出し器用に前足で開く青山羊
「なにその手帳?」
「ま、気にスンナや・・・とりあえず新しい技、習得、おめでとうな~」
「やったあ~!新しい技習得!」
なんか勢いでごまかされたが、技を得た喜びの方が大きく、私はそれ以上追及することはやめた。
「魔法少女ダイナマイト♡マリンか・・・意外とやる・・・」
そして、その様子を遠くから見ている者がいたことをこの時の私は知らなかった・・・
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