第五話:いわゆるカッコイイパイセンってやつ

1/1
前へ
/17ページ
次へ

第五話:いわゆるカッコイイパイセンってやつ

今日は日曜日!週の中で私が一番大好きな日である。 あまりにも楽しくて目覚まし時計のベルより早く起きてしまった! ・・・というのも相変わらず例の夢は見続けているのだが、ここのところザコバッキーばかりで、倒しても大した変化が起きていなかったためである。 まあ、唯一の違いは私の頭に直接誰かが語り掛けるようになった事ぐらいか・・・ 夢だからまだ良いが、現実にこれが起こってしまったらあきらめて病院に行って精密検査をするしかないだろう。 とまあ、近況報告はこれぐらいにして今日は楽しみなことがあった。 チャンチーと二人でヌーン・タイム・バケーション、略してヌタバというカフェに行くのだ。 チャンチー情報によると今日は新作のトリコロール・フラッペが出るらしい・・・ ピーンポーン 「はーい!」 律儀にも彼女が家まで迎えに来てくれた。 まあ、そうでもしないと私は二度寝して遅刻してしまうからだ。 なんか自分で言ってて情けなくなってきた・・・ 「あら、魔鈴・・・珍しく準備万端じゃないの!」 「チャンチー、悪気はないのはわかってるわよ。でもちょっとヒドくない・・・」 驚いた顔の彼女に対してかなりがっかりした顔をする私・・・ 「でもよかった!ヌタバ新作が出ると必ず行列できるから早めに行きたかったのよね。さ、行きましょ・・・」 チャンチーに促され家を出る私・・・ そう、彼女は私以上にヌタバ好きのヌタバオタクである。 というかニャンスタグラムやピッグトックといったSNSが好きでSNS映えを狙ういかにも最近の女子高生なのである。 私は・・・というと自分で言うのもなんだがギリギリついていけるぐらいで、実際はとても疎い・・・ 「で、ヌタバオタのチャンチーちゃん、今回狙ってる新作は何よ?」 「誰がヌタバオタじゃ!今回狙ってるのはダブルメロンミルク、夕張メロン、マスクメロン、ミルクの三つの味、取れたてのメロンをその場で瞬間凍結させたから鮮度が違うらしいのよ・・・」 ヌタバを語らせたらいつも以上に饒舌になるチャンチー、やっぱりヌタバオタじゃんか・・・ ちなみに、トリコロール・フラッペの由来は三色のフラッペというそのまんまのネーミングである。 しかし、色も味も女子受けする上にSNSを使った宣伝のセンスが良い。 さすが世界に展開するコーヒーチェーン店といったところか・・・ 「で、そういう魔鈴は何を頼むの?」 「私は定番のチョコバナナミルク」 「魔鈴っていっつも案パイ選ぶのね。冒険しないの?」 「うん。」 そう、私は気に入ったものは飽きるまで徹底的に選ぶタイプなのである。 「あ、魔鈴!足元!!」 チャンチーが異変に気が付き私に声をかけた時にはすでに遅し! 気が付いた時には私は段差に足をとられ、つまずいてしまった! 顔面にアスファルトが迫る! あ、これ鼻血出すパターンだ。ああ、ヒロインが鼻血出すなんて・・・ 「危ないっ!」 とっさに誰かに抱き止められ道路とのディープキスは免れた・・・ 「大丈夫だったか?」 「はいっ!大丈夫です。」 あ、これはもしやイケメンと恋が始まる予感・・・ いやイケメンなのは間違いなかったが・・・ 「本間センパイ・・・」 残念ながら女性の先輩だった。 軽音部のギター兼ボーガル、女性からの人気が異常に高い本間海菜さんである。 「なんだ、君たちもヌタバに行くのか・・・」 「あれ先輩も?」 クールな先輩がヌタバに行くイメージはないのだが・・・ 「ま、まあ・・・な・・・」 「ちなみに先輩は何をオーダーされるんですか?」 そう、そこは私も知りたい!絶対ブラックコーヒーだ!なんならエスプレッソだ! しかし、チャンチーが聞いた途端、顔を真っ赤にする先輩・・・ 「笑うなよ。ワタシのイメージが崩れるかもしれないからな・・・」 「笑いませんよ。何を頼むのも本人の自由じゃないですか。」 あれ?なんか様子がおかしいぞ。 「だよな・・・正直に言うぞ・・・いちごみるくヨーグルトだ。」 「!!」 「かわいい!」 やばい、クールな先輩が超かわいいものチョイスするなんて! 「わー!ギャップ萌えなんですけど!」 私とチャンチーの声が見事にハモってしまった。 「おまえらだからいいけど、バンドメンバーには絶対に秘密にしろよな!」 そして三人で仲良くヌタバでティータイムを過ごすことにした。 あ、誰もお茶飲んでないか・・・ この時、先輩のあまりの可愛さとフラッペのおいしさに重大な事実を忘れていたのであった・・・ ~その日の夜~ 充実した私はいつもより早く寝てしまい、早々に夢の世界へ・・・ すると頭の中に聞き覚えのある声が・・・ 「ようやく意識がつながるようになりましたね・・・」 「?!」 声が脳内に直接語り掛けてくる。 「聞こえますか?この声が。」 「聞こえますか?この歌が。」 「少し前の・・・臆病・・・いや・・・これ以上はおかしくなるのでやめましょう。」 のっけからこの声の主、おかしなノリである。まあ、私も悪いが・・・ 「この声、聞き覚えがあるけど・・・誰?」 「おっと・・・口調を変えないとわからないか・・・魔鈴?」 「この声としゃべり方・・・本間先輩?」 「正解。いや半分正解といったところでしょうか・・・あなた達の知っている軽音部の先輩、本間海菜は仮の姿、私の本当の姿は夢の世界の住人、夢想界(シャングリ=ラ)の統治者、ホーン・マーガレット・カイナ・・・ある裏切り者の手によってブルースターが砕かれたために、私は本来の力を失いました。それは夢の世界で具現化できなくなることを意味し、こうして現実世界に一時的に退避しているのです。マリン、あなたが欠片を3つ集めてくれたおかげで声だけを伝えることができるようになりました。」 「へ?本間先輩は統治者ってことは女王様だったの?」 「うーん、厳密には『統治者代行』だな。まあ、なんでら『カイナ女王』ではなく『カイナ姫』って呼んでくれよ。」 口調もとに戻ってるし・・・まあ、どっちにしろ違和感ありますけど・・・ 「ま・・・まあ、ということでマリン、あなたには引き続きブルースターの欠片を集めてもらいます。7つすべて集めれば私は力を完全に取り戻し、バッキーの首領である『バキバキ皇帝』を倒すことができるようになります。ちなみにバキバキ皇帝は私の力が衰えたために封印が解かれ、夢の世界でバッキーを従えた『バキバキ帝国』を作り、支配しています。彼らの野望を食い止めるのもマリン、あなたの使命です!」 「おおお、ついにボスの名前が明らかになった!バキバキ皇帝か~強いんだか弱いんだかよくわからない名前ね・・・」 「ちなみに戦ったことがあるあなたならわかると思いますが、ブルースターの欠片を手に入れたバッキーは特殊な能力を持ち、通常のバッキーの何倍も強くなっているはず。気を付けて戦ってください。そして、ヤギピー。私が不在の間よく頑張りました。引き続き魔鈴のサポートをお願いします。」 「おう、姫様!まかしといてや!」 調子のよい、青山羊を半ばあきれ顔で見ていたその時、朝を告げるベルが鳴った・・・ しかし、急に本間先輩が登場して重要人物になるとは、世の中わからないものである。 あ・・・それは言っちゃいけないお約束か・・・
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加