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「ひなたさん! そんなことより、ここ!」
「……へ?」
「サンシャインホールディングスの副社長って書いてますよ?!」
本当だ。雑誌の見出しも、【若きイケメン副社長にインタビュー】と書かれてある。
サンシャインホールディングスと言えば、主にホテル業だったかな。
あとは外食産業やアミューズメントなど、とにかく様々な事業を展開している大きな会社だ。
「そんなすごい人だったんですね~」
素直な感想を言う萌奈ちゃんの言葉に、私も大きく首を縦に振ってうなずいた。
大企業の副社長なのだから、きっと目が回るほど多忙に違いない。
わざわざこの店にハンカチを返しに来る時間なんて持ち合わせていないはず。
だからもう、会うこともない。
返しに来ると言ったのは、おそらく社交辞令だ。
本当に来るとしても、本人ではなく秘書など代理の人を寄越すのだろう。
そう考えながらもう一度紙面に視線を落としたところで、とあることに気づいてフフッと噴出すように笑ってしまった。
「ひなたさん、どうしたんですか~? なにか面白いことでも?」
「いや……だって、これ」
私は彼の名前が書かれたところを、指でトントンと叩きながら再びクスクスと笑う。
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