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こめかみの辺りから大きな手を差し込まれ、後頭部を支えられると再び唇を塞がれた。
そのキスに少しでも応えようと薄く唇を開けると、するりと彼の舌が侵入してくる。
お互いの舌が絡まり、身体の芯がしだいに熱を帯びてきた。
心臓はさらに激しく早鐘を打っていて、口から飛び出そうだ。
「君の右腕が治るまで待たなきゃいけないんだろうけど。……悪い。待てそうにない」
彼はおもむろに立ち上がると、私をひょいっと横抱きに抱き上げる。
……お姫様抱っこだ。などと意識しているあいだに、彼は隣の寝室の扉を開けてベッドにゆっくりと私を降ろした。
「す、すみません。こっちの部屋もまだダンボールだらけで……」
「なにを今さら」
そんなことはどうでもいいとばかりにキスが再開される。
激しいキスに翻弄され、私も目の前の彼しか見えなくなった。
「来人さん……」
「そうやって名を呼ばれるとたまらないな」
彼の顔を下からじっと見つめると、いつもと違って余裕がないように見えた。
だけどそんな彼はこれ以上なく色っぽくて。
たとえもてあそばれているのだとしても、彼にならかまわないとすら思えてしまう。
バカでもなんでもいい。彼に抱かれたい。
私も彼を、手に入れたい。
「来人さん……私のことも名前で呼んでください」
彼だって、私をいつも“君”という代名詞でしか呼んでくれなかった。
私には梅宮ひなたという名前があるのに、どの呼び方がいいのか彼の中で迷いがあったのかもしれない。
首筋や鎖骨あたりの敏感なところに、彼が執拗にキスを落とす。
いつの間にか着ていたブラウスのボタンは外され、彼の手が胸に触れていた。
「……ひなた……」
囁くように耳元で名前を呼ばれた。その声がセクシーすぎて、脳まで痺れそうだ。
好きな人に抱かれるのは最高に幸せで。
心や身体がが温かいもので満たされていくのだと実感した。
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