◇雨男と雨女

2/17
前へ
/149ページ
次へ
 私の名は梅宮(うめみや) ひなた。  年齢は二十七歳で、インテリア雑貨の専門店を営む会社に就職して今年で六年目になる。  仕事の内容は店舗勤務での販売員だ。  接客はもちろんのこと、商品がより良く見えるようにディスプレイを考えたりしている。だから店舗の掃除も立派な仕事なのだ。  わりと肉体労働が多いので大変そうに思われるけれど、私はこの仕事がしたくて今の会社に入った。  希望の店舗に配属され、とても充実した毎日を送っている。不満はなにもない。 「今日はすごくお日様の光が綺麗なのよ。だから窓ガラスもピカピカにしたくなっちゃったの」  三月に入ってから雨が多い。  内側の窓は天候が雨だとしても拭くことはできるけど、外側は晴れの日にしか掃除できないからタイミングが大事だ。 「それに今ならお客様もたいしていらっしゃらないし」  私が働いている店舗は少しだけ郊外にある。  なので平日の午前中からお客様が大勢押し寄せることはほとんどない。 「ひなたさんって、けっこう掃除が好きですよね」 「そうかな?」 「きっといい奥さんになれますよ」 「あはは。まず結婚相手……その前に、彼氏を探さなくちゃね」  今日も萌奈ちゃんとゆるい会話を楽しみながら雑巾や脚立を準備していく。  お世辞なのだろうけれど、萌奈ちゃんは気が早いにもほどがある。  恋人もいない私が、その先の結婚のことを考えられるわけがないのに。  思わず自虐的にフフフと笑みがこぼれた。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

523人が本棚に入れています
本棚に追加