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「うるさいな、双子か。その喋り方、いい加減やめろよ。ふたりともおんなじように語尾を伸ばすから、俺の耳がおかしくなる」
……いや、間違っても私と萌奈ちゃんは双子ではない。血も繋がっていない。
だけどたまに窪田さんは、わかっていて私たちをそう呼ぶ。
たしかに萌奈ちゃんの喋り方につられてしまうことはあるけれど。
「ヤダ~、窪田さんこわぁ~い!」
両手を頬に当てて、萌奈ちゃんがコミカルに怖がってみせる。
それにならって私も萌奈ちゃんと同じポーズをして「こわぁ~い」と言うと、窪田さんがわざとらしくあきれて溜め息を吐いた。
「なんだ、その取って付けたようなブリっ子は」
「かわいくないですか?」
「しかもふたり揃ってやるなよ! 特に梅宮、お前はいい歳をして……。そんなあざとさが許されるのは、二十五までだからな! それが俺のボーダーラインだ」
窪田さんがいきなり自分勝手過ぎるボーダーラインを引いた。
萌奈ちゃんは私よりも三つ年下で二十四歳だからセーフだけれど、私は二歳もオーバーだ。
「おい、寺沢。お前だってギリギリだぞ」
「窪田さん、今日も口が悪いですね。それに、セクハラだと思いますけど~?」
萌奈ちゃんの言うとおりだ。窪田さんは残念ながら口が悪い。
ここで働き出した当初は私もそれに驚いたけれど。
窪田さんの口の悪さには、今は完全に慣れてしまった。
もちろんお客様に対して接客時はきちんと正しているし、同僚に対しても親近感だとか愛情があるのがわかるから、私たちも許せている。
口は悪くとも後輩の面倒見はいいし、実は良い人で頼りになる先輩だ。
そんな窪田さんと萌奈ちゃんのやり取りを笑って聞き流すようにしながら、私は窓掃除のために店の外に脚立をセッティングした。
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