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「明日も……雨降るんですかねぇ?」
「ん? 明日なにかあるのか?」
そっと私がつぶやくと、窪田さんが降ったらまずいのかと不思議そうな表情で尋ねた。
「明日はほら、丹沢さんの結婚式じゃなかったでしたっけ?」
――― 丹沢さん。
その人物の名前を出したのが気に入らなかったのか、窪田さんからは軽い舌打ちが返ってきた。
「梅宮、お前はお人よしだな。あんなヤツの結婚式なんて雨が降りゃいいんだ! 土砂降りの、ザーザーの、雷ゴロッゴロの!」
「……そこまで言わなくても」
こんなに窪田さんが憤慨するなら名前を出さなければよかった。
苦笑いでたしなめると、フンっと鼻をならしたあと、窪田さんも言葉を飲み込んでくれた。
丹沢さんは本社所属の店舗アドバイザーで、以前にうちの地区を担当していた人だ。
売り場のディスプレイや売れ筋のアドバイスをしてくれていた丹沢さんは、熱心にうちの店舗に来てくれていた。
「アイツ、お前を口説きまくってたくせに、コロッと違う女と結婚するとか、ありえねぇ」
丹沢さんは窪田さんより年上で先輩なのに、あんなヤツとかアイツ呼ばわりしてひどい言いようだ。
「別に……口説いてたつもりはなかったんじゃ……」
「なに言ってんだよ! ずっとお前にくっついて離れなかっただろ」
ここまで窪田さんが憤慨している理由はひとつだ。
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