1.十九才 大学二年生 春 

8/9
前へ
/134ページ
次へ
 隼の目が細められた。 「苦い」  そのまま僕たちは牛乳の話をした。  確か僕が、牛乳を入れるとそんなに苦くなくなるよとか、そのようなことを言った。  慌てていた。  隼との距離の取り方が分からなかった。  隼から戻ってきたコーヒーのカップに口を付けるときに震えてしまいそうになった。指と唇が。 「牛乳か。背を伸ばしたくて、がんばって散々飲んだ。白い感じの後味がさ、あんまり好きじゃないんだ」  隼は人懐こい笑顔で僕に語りかけた。  隼の背は僕と同じくらい、百八十センチ近くはあるだろう。  僕はどちらかというとひょろひょろと細長い。牛乳が足りなかったのだろうか。  隼は眠るかがりに口付けて起こした。 「不思議な味がしたわ」  かがりはうっとりした様子で隼の膝の上で身をよじった。  二、三度まばたきをしてから僕を見上げた。 「ユキの味だよ」  隼がかがりの唇を撫でた。右手の中指。  仙骨のあたりがぞわりとした。僕のものが撫でられたわけでもないのに。 「そうなの?」 「そうだよ。欲しい?」
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加