2.十九才 大学二年生 梅雨 

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 隼はいつも僕の分も昼食を用意してくれていた。  ジップロックに入ったサンドイッチやタッパーウエアに入ったにんじんと豆のサラダ。  負担ではないのかと尋ねたら、スロークッカーという調理道具について説明してくれた。  材料を放り込んでおくと煮込まれるのだと。  残り物のアレンジだし料理は息抜きなのだ、と少し照れくさそうに笑った。  隼の髪と目は雨の日でも光を集めるかのようだった。  隼のご飯は美味しいけれど、デザートは絶対食べさせてくれない、とかがりは僕にそっと教えてくれた。  かがりの食事は隼によってコントロールされていた。  タンパク質と食物繊維。主食は玄米や全粒粉。  白いもの、つまり、精製された砂糖や穀物は栄養価が低い上に依存性があるのだとか。  ふたりとも体育学科のグラウンドの近くにアパートを借りていたが、隼はかがりの部屋に住んでいるも同然だった。  僕はまだ、水曜日の昼間のふたりしか知らなかったけれど。  長袖を脱ぎ捨てていく時期の疼くような夜を、かがりと隼がどのように過ごしてるのかも、隼が夜ごと保存食を作っているその理由も、僕は知らなかったのだけど。    そういえば、ふたりは僕のコーヒーを一口づつだけ飲むのだった。いつも。
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