59人が本棚に入れています
本棚に追加
隼はいつも僕の分も昼食を用意してくれていた。
ジップロックに入ったサンドイッチやタッパーウエアに入ったにんじんと豆のサラダ。
負担ではないのかと尋ねたら、スロークッカーという調理道具について説明してくれた。
材料を放り込んでおくと煮込まれるのだと。
残り物のアレンジだし料理は息抜きなのだ、と少し照れくさそうに笑った。
隼の髪と目は雨の日でも光を集めるかのようだった。
隼のご飯は美味しいけれど、デザートは絶対食べさせてくれない、とかがりは僕にそっと教えてくれた。
かがりの食事は隼によってコントロールされていた。
タンパク質と食物繊維。主食は玄米や全粒粉。
白いもの、つまり、精製された砂糖や穀物は栄養価が低い上に依存性があるのだとか。
ふたりとも体育学科のグラウンドの近くにアパートを借りていたが、隼はかがりの部屋に住んでいるも同然だった。
僕はまだ、水曜日の昼間のふたりしか知らなかったけれど。
長袖を脱ぎ捨てていく時期の疼くような夜を、かがりと隼がどのように過ごしてるのかも、隼が夜ごと保存食を作っているその理由も、僕は知らなかったのだけど。
そういえば、ふたりは僕のコーヒーを一口づつだけ飲むのだった。いつも。
最初のコメントを投稿しよう!