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「かがりの通訳はどこへ行った?」
司会の男子学生が教室を見回した。
もう一人の学生が隼を探し出して指さした。
離れちゃって残念だったな、とそいつはかがりに笑いかける。他意は無いのかもしれないが幼子をあやすような口調だった。
「あいつストイック風になっちゃったな」
隼は教卓に近いところの班にいた。ちょうど講師を交えて議論しているらしき姿が見えた。
僕はぼんやりしたまま、その会話を聞いていた。
司会の男子学生だけでなく、この班の、かがりと僕以外の四人はみんなサッカー部員なのだということが分かった。
うちの大学はスポーツが盛んで、特にサッカー部は強豪なのだと知ってはいたけれど、実際に層の厚さを実感するのは初めてだった。
「隼?」
心臓がひくっと刺されるように感じた。
その名前。ハヤテ、と口の中で反すうする。
初回の授業の自己紹介で覚えていたのはかがりの名前だけだった。
「隼だって二軍だろう?」
会話を黙って聞いていたかがりが、もの問いたげにまばたきをした。
シャープペンシルを握りこんだ指先は白くなっていた。
ほどなく授業の終わりがやって来て、司会の男子学生はそつなく講師に返答した。
私たちの班の話し合いとしては、憲法九条を現在の国際状況に見合う方向で改正したほうが良い、との結論に達しました。
再び机をがたがたと元の場所に直している最中に、かがりに声をかけた。
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