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隼はジャージを着ていることもあればTシャツとハーフパンツのこともあった。
ランニングシューズを履いていることもあればスパイクシューズのこともあった。
蛍光イエローの入った鮮やかなスパイクシューズのことは覚えている。
僕は隼の足元ばかり見ていたからだ。
僕はざらざらした床に膝をついていた。
口の中はほこりっぽくて鉄くさいような匂いと味がした。
隼は僕の口腔内に射精した。
その白い液体の行き場をどうしてよいか分からず、飲み込むことにしていた。
喉にはりつく精液。僕の髪の中に差し込まれる隼の手。
ほとんど言葉を交わすことなく行われる一連の行為。
隼の欲情した目は僕を惹きつけて離さなかったし、隼の泣きそうな顔は僕を苦しめた。
隼に求められていると、そう思いたかったけれど、もしかしたら恨みの表現なのかもしれないとも思った。
僕さえいなければ物事はもっとシンプルだった。
かがりのお腹に宿った子どもの父親が誰なのかと、疑う必要は無いのだから。
行為後に、手負いの獣のように去って行く隼の背中を見送る。
倉庫の扉が細く開いて、閉められる。
隼の後ろ姿がはっきりと光の筋の中に浮かび上がり、消える。
僕は取り残される。
喉にへばりつく苦みと自分の欲望と共に、倉庫の中に取り残される。
倉庫から一番近いトイレは体育館とプール棟の間にあった。僕はそこで口をゆすぎ、手を洗った。
ときに、どうしても鎮まってくれない自分の男性器を自分で慰めた。
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