7.二十才 大学三年生 春 

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 隼はジャージを着ていることもあればTシャツとハーフパンツのこともあった。  ランニングシューズを履いていることもあればスパイクシューズのこともあった。  蛍光イエローの入った鮮やかなスパイクシューズのことは覚えている。  僕は隼の足元ばかり見ていたからだ。  僕はざらざらした床に膝をついていた。  口の中はほこりっぽくて鉄くさいような匂いと味がした。  隼は僕の口腔内に射精した。  その白い液体の行き場をどうしてよいか分からず、飲み込むことにしていた。  喉にはりつく精液。僕の髪の中に差し込まれる隼の手。  ほとんど言葉を交わすことなく行われる一連の行為。  隼の欲情した目は僕を惹きつけて離さなかったし、隼の泣きそうな顔は僕を苦しめた。  隼に求められていると、そう思いたかったけれど、もしかしたら恨みの表現なのかもしれないとも思った。  僕さえいなければ物事はもっとシンプルだった。  かがりのお腹に宿った子どもの父親が誰なのかと、疑う必要は無いのだから。  行為後に、手負いの獣のように去って行く隼の背中を見送る。  倉庫の扉が細く開いて、閉められる。  隼の後ろ姿がはっきりと光の筋の中に浮かび上がり、消える。  僕は取り残される。  喉にへばりつく苦みと自分の欲望と共に、倉庫の中に取り残される。  倉庫から一番近いトイレは体育館とプール棟の間にあった。僕はそこで口をゆすぎ、手を洗った。  ときに、どうしても鎮まってくれない自分の男性器を自分で慰めた。
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