8.十八才 大学一年生 初夏 回想 

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 ジュニアユースが中学生の年代、ユースが高校生の年代。  隼は名門といわれるサッカーのクラブチームに属していたがユースに上がる選抜に落ちた。そのため高校は部活で選んだ。  それなりにサッカーの強豪校だったが、練習環境としてはクラブとは雲泥の差があるように感じられた。  思春期のもどかしさ。苛立ち。  諦めるには早すぎるし、何かを新しく始めるには遅すぎる、隼はそう思っていた。  僕が参考書と植物園の落ち葉集めのアルバイトに明け暮れる地味な高校生活を送っている間、隼はサッカーの練習と女の子を取り替えて遊ぶ生活に明け暮れた。  運動して誰かと寝て。大学に入ってからも、慣れ親しんだパターンを繰り返した。  繰り返していれば、もどかしさを棚上げしておけた。かがりと親しくなるまでは。 「ユキが初恋って言っただろう。あれを聞いて、ああそうかって。オレにとっても初恋だったんだと思う」  僕は切ない思いをこらえて聞く。  どこにでもある運命的なボーイミーツガールの顛末を。  かくれんぼをしよう、と隼に持ちかけたのはかがりだったのだという。  大学一年生の夏休みの直前だった。  親しくなり始めたばかりの男女がするには奇妙な遊び。 「なんでかくれんぼなのか分からなかった。でも、かがりがしたいっていうなら、やろうと思った。絶対に見つけてくれって言われた」  僕には分かった。  かがりはひとつの覚悟を持って隼をかくれんぼに誘った。  僕は、かがりが十才の時のかくれんぼを覚えていた。  かがりは誰にも見つけてもらえなかった。  かがりにとって隼は運命の相手だったのだろう。  かがりは自分を見つけてくれる運命の相手を切望していた。
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