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その夜。二十四時間営業のスーパーマーケットに三人で出かけた。
妊婦なのにぴょんぴょんと跳ねたがるかがりの手を引く。
かがりは悪阻が終わって食べ物を見るのが楽しい、とはしゃいだ。隼は買い物カートを押す。
騒々しくて馬鹿らしい深夜のショッピング。
かがりは、きな粉の優秀さを力説する。タンパク質が豊富で安価だ。
枝豆にしよう、と隼は僕に耳打ちする。きな粉は脂質も多いのだとか。
どっちも豆じゃないかと僕は口にはしない。
ひっそりと微笑む。
ちりちりとざわめく胸。
かがりと繋いだ手のぬくもり。
「ゴミ袋の節約は失敗しちゃったね」
残念そうに、かがりが四十五リットルのビニール袋をカートに入れた。
ゴミを詰め込みすぎて袋が破れて惨事を引き起こしたのは、一昨日の朝だった。
生活の価値観のちょっとした違いは、お金に余裕があれば、ちょっとした違いで済むのだけど。
三人で旅行に行ったこともなかった。
スーパーマーケットがワンダーランドで、アパートの狭い部屋が僕たちのお城で、僕たちはむしろ、そこから逃れられない。
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