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左の頬に視線を感じた。隼だった。
隼は机ふたつ分くらいの距離から僕たちを見ていた。
幽霊を見たような顔をしていた。
隼、その名を聞いた瞬間と同じように心臓が跳ねた。
身体が自分に知らしめるのだと、後に僕は理解する。
隼の気配は僕の毛を逆立たせた。
「隼」
満面の笑みのまま、かがりは隼の首に飛びついた。消え入りそうな声ではなかった。
隼はかがりを抱きとめて、髪を撫でた。
僕は肩で息をついた。
隼は僕に微笑みかけた。
はっきりした二重の目と意志の強そうな眉。
窓から差し込む陽が隼のまつげに引っかかっている。
隼は僕の名前を尋ねた。
「ユキ」
最初から、隼は僕を幸人ではなくユキ、と呼んだ。そんなふうに僕を呼ぶのは後にも先にも彼だけだった。
彼とかがりだけ。
「ユキ、オレたちと来る?」
完璧な誘い文句だった。
隼は貫くような目をしていた。かがりは隼の胸に頬を預けたまま横顔でこちらを振り返った。
隼の目は僕を貫いたのだった。
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