59人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はいくつかシューベルトの曲を弾いてみた。
かがりは上半身を大きく使ってゆったりと踊った。かがりが動くと、動きが踊りになる。
腕が美しいと思った。
最初にこのスタジオでかがりの踊りを見たときには、足の甲が目に焼き付いた。
今日は、首から鎖骨までの線と、肘から指先までの線がきれいだと思った。
隼は抱っこひものなかに君を収納して、壁際に立っていた。
君はうとうとしたり、苦情を言うようにふにゃふにゃとぐずったりしていた。まだ髪の毛がほとんどないほわりとした頭だけが見えていた。
隼は赤ん坊だった君の頭の匂いをかぐのがとても好きだった。
かがりの髪を撫でて耳に口付けるのと同じように。
床に跪くような姿勢で動きを止めたかがりに、隼が近付く。
腰をかがめて両手で赤ん坊の尻の辺りを支えるようにしながら、かがりの顔を覗き込む。
かがりは隼に何かを囁いた。
隼は中腰のまま動きを止めた。
最初のコメントを投稿しよう!