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9.二十才 大学三年生 夏から秋
かがりの妊娠が分かってから、僕たちは三人でセックスをしなくなった。
夜は静かに肩を寄せ合って休息を取る時間に変わった。
かがりの悪阻はそれほどひどくない部類らしかったが、僕には充分辛そうに見えた。
僕たちはかがりの身体をいたわった。
神聖なもののように扱った。
子を宿したかがりを性的な目で見るのは冒涜行為のように思われた。特に隼はそうだったと思う。
二十才の無目的な性欲の矛先が変わっただけなのかもしれない。
隼は僕を倉庫に呼び出すことはなくなった。
かがりの部屋でふいに訪れる隼とふたりきりの時間。
隼は僕に口付ける。吐息を交換する。
口の中が切れてしまうような暴力的なキスではない。
それなのに脳内がぐずぐずに侵される。
隼の手の甲が僕の頬に触れ、耳をかすめる。
キスだけでどこまでも高められてしまうのではないかと不安に後退る。仙骨のあたりがざわめく。
ジャージやジョガーパンツ。隼は動きやすくて着替えをしやすいものばかり身に着けている。
だから僕の右手は簡単にウエスト部から中へ入り込む。
隼の手が導く。
恋人同士のように囁かれて戸惑う。
かがりを呼ぶときのように僕のことを呼ぶ。
手に触れた熱いかたまりを撫で上げる。
下から上へ。
恋人にするように隼が僕を抱き寄せる。
僕は温かい舌を吸う。
男の唇のかたい感触、やわらかいその内部。
隼の舌が僕の歯列をなぞる。
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