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友達にいつもより少し大きい声で「明日誕生日だから!」と話した。
ちょっと迷ったけど、LINEのステメにも「もうすぐ誕生日!」と書いた。はしゃいでるみたいで若干恥ずかしい。
期待してもいいだろうか。それとも、流石に調子に乗りすぎだろうか。
1年に1度の誕生日。君からのおめでとうが何よりも欲しい。
……なんて思っていたが、まあ、期待のしすぎだったわけで。
君とのLINEは埋もれたまま、誕生日は終わろうとしている。
今日学校があれば奇跡は起こり得たのかもしれない。しかし残念ながら今日は日曜日であり、君に会うことすらできなかった。
いつまで経っても未練がましくスマホを見つめながら、深いため息をつく。
「せっかくの誕生日くらい、ちょっとLINEしてくれたって、いいじゃんね……」
あたかも君のせいのように呟くが、普段自分から話しかけられない私にも非がある。もちろんそんなことわかっているし、夢ばかり見ないようにと思っていた。思ってはいたのだ。
それでもやっぱり小さな奇跡を願って時刻は午後11時半。もう寝てしまおうか。
もう一度ため息をついてスマホを置き、でも眠る気にはなれなくて、友達がくれたプレゼントを取り出した。
小さなぬいぐるみと、かわいい文房具セット。仲のいい2人が家まで持ってきてくれたのだが、2人とも私が欲しがっていた物を覚えていたらしい。嬉しすぎて眺めながらニヤけてしまう。
友達がこんなに素敵なプレゼントをくれた。もうそれで充分ではないか。そう、君からのメッセージなんてなくても別に気にならないのだ。
そうそう、と1人で相槌を打ち、プレゼントを机の上に飾り直した。
「よし、寝よ」
電気を消してベッドに寝転がり、スマホでアラームをセットする。
と、ふいに。
スマホが震えて、画面の上に通知が表示された。
それを見た途端、思考が止まった。
君から、LINEが2件。
顔の上で持っていたスマホが降ってきて、その痛みで我に返る。
恐る恐る表示すると、おめでとうのスタンプとメッセージが来ていた。
『ギリギリだけど、たんおめ!今年もよろしく!あと明日プレゼント渡すから期待しとけ^_^👍🏻』
気の抜けた顔文字に君の表情が思い浮かんで、ふふっと笑ってしまう。なんだか君らしさを感じるお祝いメッセージ。
誰かが見ているわけでもないのに、ニヤける顔を枕に押し付けて隠し、呟いた。
「どうしよう、嬉しすぎる」
せっかくの誕生日〜とか思っておいてなんだが、たかが誕生日にこんなに幸せになっていいのだろうか。
返事をしていなかったことを思い出し、もう一度スマホと向き合う。
この嬉しさが滲みすぎないように気をつけて返事を送り、そのままスマホを握りしめた。
こんなに今嬉しいのに、明日プレゼントまでくれるらしい。ちょっとサービスが過ぎてはいないだろうか。どうしよう、上手く反応できるかな。ぎこちなくならないようにしなきゃ。
目を閉じてはみたけど、嬉しさとわくわくでまだ眠れそうになかった。
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