どこかのドア

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 目の前にドアがある。僕はそれを開けた。どこかで会ったような気がする人がいた。 「久しぶり」その人が声をかけてきた。 「お久しぶりです」 「元気そうだな」 「そうなんですかね? どうなんでしょう? そんな気がしないでもないですけど」 「それは何よりだ。元気が一番、根性二番、三四が気合で五に笑顔ってな」 「本当にそうですね」僕は愛想笑いをした。 「じゃあ。元気でな」 「はい。ぜひ、お願いします」 「じゃあな、ありがとうな」  その人は去っていった。振り返ると、もういなかった。僕の目の前にはまた新しいドアがあった。僕はそれを開けた。  見たことはあるが、名前が思い出せない人がそこにいた。 「あれ? こんなところで何してんの?」 「特になにも」 「変わらないね」 「ほんとそれ」 「谷村君、ちょっと痩せた?」 「いや、そんなに変わってないと思うけど」 「そう、なんかそんな気がしてさ。でも、またいつか会おうね」 「はい、ぜひ、お願いします」 「ありがとうね」  その人は去っていった。振り返ると、やはりいなかった。またドアが目の前にある。僕はドアを開けた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加