夏の逃避行

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みーちゃんとゆーちゃん。 私たちはいつもいっしょだった。 保育園ではいつも遊んで、家同士も仲がよくて、小学校も同じクラス。 さすがに小学校に入ってみーちゃんとゆーちゃんははずかしいか、と言って苗字で呼び合うようになったけれど二人のときは昔の呼び名のままだった。 「もうすぐ夏終わっちゃうねー」 夜になると涼しい日が続き、いやでも季節の変わりを意識してしまう。 「夏休みが終わらなければいいのに」 私はポツリとつぶやいた。 夏祭りにプール遊びに海水浴。 夏のこれだ!という定番なことはいろいろやった。 宿題もちゃんとすませた。 それでも、小学校最後の夏ということにどこか憂鬱(ゆううつ)な気持ちになってしまう。 どこかへ行きたいな。 漠然とそう思った。 夏が終わらない場所へ。 なんてね。 「終わってほしくないね、夏」 私は驚いて隣を見る。 こんがりと焼けた小麦色の肌から汗をしたたらせたゆーちゃんは言った。 以心伝心かな? 「へへ、ほんとうに」 私は笑ってそう言う。 ゆーちゃんの目がまっすぐ私を見た。 くわえていたアイスキャンデーの棒を口から抜く。 「なら、逃げちゃう?」 私はその言葉に目をパチクリと瞬かせた。
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