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「秋の大会あるんでしょ?」
岡野が言った。
「いつのまにそんなことを知ったの?」
さっきまで僕の名前も知らなかったのに。フフンと岡野は鼻で笑う。
「伊坂くんがさっきCDの列に並んでときに私のことを調べたように、私も健吾に連絡してた」
「あー……」
「で、セッターの伊坂くんに会ったよって言ったんだ。そしたら部活に来てないこと教えてくれた」
自慢げな顔の彼女に僕は苦笑する。
スマホを弄ってたのはお互い様だが、まさか僕のことを岡野が調べてるとは思わなかった。
「部活、行かなきゃだってわかってるけど……なんか足が進まなくってさ」
ライブは凄かった。それは間違いない。だからといって、こっちの気持ちまでは一気に変えることはできない。
「煮え切らないなぁー、じゃあさ、いっそのことさ」
いきなり岡野が僕に顔を近づけてきた。何かとてもいいことが思いついたとでも言うように。悪い予感しかしかなった。
「伊坂くんも金髪にしちゃおう。そうすればもう逃げられないかもよ」
驚きのあまり、表情が固まった僕に、金髪の岡野は今日一番ステキな笑顔を僕に向けてくれた。
その後、僕は部活に復帰した。こうして、今年の夏は終わった。
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