12. 最後の1週間

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清流も1枚取って頬張る。甘さはあるけれど風味が独特で、食べたことない味が口いっぱいに広がった。 「……舞原、お前が買ってこいって連絡してきたくせに言いたい放題だな」 「いや、一番辛辣だったの唯崎さんですからね?」 笑いが起こる様子を、清流は一人遠くから眺めている心持になった。 経営企画部のメンバーとも別れなければならないこと、そして何も告げずに突然辞めなければならないことに、申し訳なさを感じる。 (直接感謝を言いたいけど、そうしたら辞める理由も聞かれるだろうし、何よりすぐに加賀城さんの耳に入ってしまう…) メンバーの皆には本当に良くしてもらった。 突然やってきた何も分からない自分を受け入れてくれて、この明るい雰囲気に何度も救われた。 だからせめて最後の日までは精いっぱい仕事をして、少しでも役に立とうと決めていた。 「舞原さん、私も修正手伝いますよ」 「ほんと?ありがと、助かる」 清流は舞原から資料を転送してもらい、修正箇所を確認する。 そしてもう1枚クッキーに手を伸ばして口に入れると、舞原は少しギョッとした顔をする。 「清流ちゃん、まだ食べれるの?…これぶっちゃけ不味くない?」 「いえ、美味しいですよ?」 (このメンバーとこの空間で食べるものは、何でも美味しい) その言葉は呑み込んで、清流は再びパソコンに向かった。
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