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仕方なく、洸の後を追いかけるように自動ドアをくぐると、目に飛び込んできたエントランスホールに腰を抜かしそうになった。
(……何ここ、お城?というか、宮殿…?)
吹き抜けのエントランスホールは、貴族のお屋敷かのようなクラシカルな装飾で、床は鏡面のように輝く大理石。庭に面したラウンジでは、シャンデリアの下で庶民とは思えない雰囲気の人たちがゆったりと寛いでいた。
どこを切り取ってもまるで絵画のような光景に、ここがとんでもない高級ホテルであるということが分かった。
(あの人……いったいどういう人なの?)
スーツの上着を借りているとはいえ、全身ずぶ濡れの自分がこれ以上足を踏み入れることが躊躇われて、清流は他の客の邪魔にならないよう、片隅で待つことにした。
洸はレセプションには寄らず、コンシェルジュと思しき人に何やら説明をしている。
先ほど渡したパスポートを確認しながらも、こちらを見る視線を感じる。こんな格好では仕方ないかと思いつつ、どことなく肩身が狭い。
やがて、洸がコンシェルジュを連れて清流の元へと戻ってきた。
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