1. 救いの手

12/17
前へ
/266ページ
次へ
お風呂から上がり、着替えや髪など一通りを整えてパウダールームから出ると、洸はリビングのソファーでノートパソコンを開いていた。 清流に座れば?と目線だけでソファーへと促して、また画面へと戻る。 邪魔をしないようにと一番離れた位置に移動して、ふと窓を見るとすでに日が暮れていた。 正面の大きな窓の外はローマの街並みが広がっていて、その夜景に思わず目を奪われる。 (すごく綺麗…) 都会の夜景とは違う、遺跡や歴史ある建物がライトアップされた景色はとても幻想的で、これが見れただけで思い切って旅行に来てよかったと思える。 見ると、外を歩く人は傘を差していない。雨は止んだみたいだ。 身なりも整えたし、これならまた泊まるところを探しに行けそうだと考えていたとき、後ろでパタンとノートパソコンが閉じられる音がした。 「お風呂先に使ってしまってすみません。ありがとうございました」 「あぁいいよ、別に気にするな」 洸は腕を伸ばしながら首を2、3回鳴らしている。 「そうだ、クリーニングだけど明日の7時には仕上がるって」 「明日の朝、ですか?」 「都合悪い?」 「いえ大丈夫です。えっと、じゃあ何時ごろ取りに来たらいいでしょうか?」 「取りに来る?このまま泊まるんだから必要ないだろ」 ―――泊まる?私が、ここに??
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5974人が本棚に入れています
本棚に追加