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◇◇◇◇
「姐さん、ここの値が経理の出してきたのとズレてるんですけど、理由分かります?」
「どれ?…あぁこれ、価格情報が更新されてない…っていうか去年の値じゃない?たぶんコピペするときに直し忘れたのね」
「はぁー、ふざけんなよマジでーっ」
予想していたように、週の後半からバタバタと忙しさが増した。
舞原が不満を漏らしながら座席に戻ると、大きく溜息を吐きながらキーボードを叩く。
「もう時間がないしこっちでやり直すのが早いと思うわ。経理には後で共有しといたほうがいいけど」
「ですよねー…この前の大ミスといい、そろそろ奢ってもらわないと割に合わないっすよ」
「随分荒れてんな」
ちょうど経営企画課のドアが開いて、洸が入ってきた。
「ほら、差し入れ」
「ありがとうございまーす!さすが部長、ちょうど小腹が空いてたんですよね」
時間は15時過ぎ。
洸がシンガポール出張のお土産に買ってきたクッキーを、舞原は嬉々としてパッケージを開けた。
「うわ、やっぱりマーライオンクッキーじゃないですか」
舞原がおもむろに1枚つまむと、確かにそれはマーライオンがかたどられたクッキーだった。
「わぁー、案外ベタなのね加賀城くんって」
「しかも何味っすかこれ、ココナッツ?にしては独特な味が…」
「甘ったるい芳香剤のような味がしますね。それに生地がパサパサで水分が奪われます」
それぞれ、洸のお土産に対して好き勝手に感想を言い合う。
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