12. 最後の1週間

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マンションの下まで降りると、すでにエントランス前に外国車のSUVが横付けされていて、その大きさに驚いてしまった。 助手席の扉を開けてもらい、おそるおそるステップに足をかけて車高の高い車に乗り込む。 清流が座席に座ったのと同時に扉が閉められた。カチッとシートベルトを止める音がやけに響く気がして、少し緊張する。 洸はフロント側から回り込んで運転席に乗ると、行くかと言って車を走らせた。 高層ビルの合間に張り巡らされた首都高を走っていく。 ギアを操る運転さばきと、運転する洸の横顔を盗み見る。 思えば誰かが運転する助手席に乗るのはこれが初めての経験だった。予想以上に隣りとの距離近いんだな、とどきまぎする。 (とりあえずこの服にしちゃったけど、他のにすればよかったかな。メイクもあまり時間を掛けられなかったし) 変なコーディネートにならないようにと思っていたら、薄手のVネックニットにカーディガン、ひざ下のプリーツスカートという、普段と変わりない無難なスタイルに落ち着いてしまった。 今までそんなこと気にもしなかったのに、今日はそんな小さなことが気に掛かる。 デートだなんて思っているのは間違いなく自分だけだろうけれど、そんな今さら考えてもどうしようもないことをあれこれ考えてしまう。
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