12. 最後の1週間

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渋滞のエリアを抜けるとその後はスムーズに流れて、目的の場所近くのパーキングに車を停めた。 そのオーダーメイドスーツの専門店は、自宅兼店舗のこぢんまりとしたお店で、一見それとは分からない店構えだった。 洸の祖父の代から付き合いのあるお店で、維城商事が生地や副資材を卸していて、時には希望の物を海外まで探しに行くこともあるらしい。 基本はオーナーしかいないから大丈夫だと言われたけれど、中に入ることは丁重に断って外で待つことにした。 完成したスーツを試着するところを見たくなかったといえば嘘になるが、きっととても似合っているに違いない。 そんな想像をしながら、お店の近くをあまり離れない範囲で歩く。 アパレル系やアクセサリーショップ、雑貨屋など気になるお店がいくつかあったけれど、この界隈は西洋風かつ洗練された個人経営のお店が多い。今の清流では少し大人の街に感じて、気ままにふらりと入るには勇気がいる。 お店の中には入らずに、文字通りのウィンドウショッピングを楽しんでいると、とある店先にディスプレイされているグレンチェック柄のワンピースが目に飛び込んできた。 (…素敵だなぁ) グレンチェックといえばグレーのイメージだったがこのワンピースは赤色なことにまず惹かれた。ハイウエスト位置のベルトもアクセントになっていて、クラシカルな雰囲気ながらとてもおしゃれだ。 (あの生地は何だろう、羊毛かな?でも柔らかそうで光沢もあるしカシミヤ混紡かも) 自然とそんなことを考えていると、ショーウィンドウに洸の姿が映った。手には黒の大きな紙袋を下げている。 清流は振り向いて、洸の元へと駆け寄った。
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